私,Web上では原山胡人を名乗る量子化学(化学現象を量子力学を基礎に解明する分野)を専門とする科学者です.私の高校の同級生でありかつ旧来の友人である日本画家佐藤嘉則のWeb美術館館長をつとめさせていただきます.
晩節を迎える齢となりこれまでの経験からまた長い間の大学での教育経験から,人にはその人固有の才能が備わり,その才能と努力の方向が一致したとき人並みはずれた能力を発揮すると確信するに至りました.それは物覚えの良し悪しではなく,器用不器用の類でもありません.天与というべきかもっと高次元の能力に関することです.思うに古今東西,本当に心を打つ絵画の作者たちは誰にも教えられること無く不滅の作品を残しました.
私は,佐藤氏はそのような天与の才能をもつ逸材と確信しています.佐藤氏と私は,宮城県立工業高校の化学工業科というところに在学していました.当時,氏の高校生として印象はいわゆる劣等生で,授業をまともに受けている様子はほとんどありませんでした.授業中は前席やわきの席の生徒(私)をつついては話しかける.それに応じて返事すると,先生から注意されるのは私ということがたびたびでした.
氏は無事卒業し,某石油会社に就職しましたが,数年で退社し,ギター演奏家を志したが挫折,その後,鮨屋の板前,不動産会社社員等いくつかの職業を遍歴後,五十才をすぎて故郷である宮城県亘理郡郡亘理町に戻ってきました.
故郷ののんびりした環境の中で思い立ったのが絵画でした.日本画のことは何も知らないまま,仙台の絵画教室に入門したのがたまたま日本画教室でした.しかし,上達は早くたちまち先生を凌駕してしまいました.その後は,化学の知識を活用し表現方法を研究し,氏独自の表現空間に至り,多くの傑作を誕生させました.
この美術館では,傑作だけではなく習作のような作品も掲載しました.その方が画家の絵画への志向を知る上で必要と思われるからです. |